喪失から希望への映画か「ハナレイベイ」をみて

私のことを知ってもらいたく少し、自分の関心のあることを書いています。
映画の感想もそのひとつです。
私の人生の一部は映画です。

カウンセラーの仕事をしていますが
映画はカウンセラーとしての私に大切なことを与えてくれます。
映画は私の体験することのない人生をみせてくれます。
そして、良い映画は共通してこころの深いところをゆさぶります。

村上春樹原作の映画「ハナレイベイ」観てきました。
原作は東京奇譚集という短編集でもうはるか昔に読んだのですが、他の短編の記憶は全くないのに、この
「ハナレイベイ」だけは、ストーリーもハワイのノースショアの風景もはっきりと覚えていました。
私の心に焼きついていたようです。
不思議な、そして哀しく美しい話です。

ハナレイベイという映画の新作の題名を聞いて
本当に、びっくりしました。
あの世界があのハワイの海岸と大波を
映像で見ることが
できるのだと。でも、期待とともに
原作のよさが損なわれてしまうのではという不安もありました。
でも、映画は映画の世界でハナレベイを
描いてくれましま。

(以下、多少のネタバレありの個人的な感想です。)

ハワイでサーフィンの最中に息子を亡くした母親の
物語です。
母親が、大きな突然の喪失を受け入れられず
息子を亡くした海岸に通い続け、その海と対峙し続けました。
自然に奪われた命
美しい海辺に座り続けていても
主人公の母親は海や島とは溶け込むことはできなかった。
それでも彼女はハワイに毎年、訪れる。
時間も彼女も凍りついたかのように月日がたつ。

そして10年たった時に
すこしずつ歯車が動き出す。、
日本から来たサーファーの若者たちとの交流が生まれ
そして思いもかけない不思議な、出来事から
彼女の悲しみという感情と息子への様々な感情、愛情がようやくあふれだし
初めて島の自然を受け入れ、自然も彼女を包みだす。

喪失を、受け入れて、亡くした存在からの希望を
受け取り始める。

映画をみて、原作を読んだ時には
そこまでリアルに感じられなかった
カウアイ島のノースショアの海は
映像により本当に美しくリアルでした。
なじみのこの話が
新しい物語として運ばれてきました。

映画館での90分間は
ハワイの海岸に自分もいるようで
ふわっと、ゆるんでいくのも
感じられました。

映像だけでなく、吉田羊も、若い俳優たちも
現地の役の人も音楽もみんなよかった!
特に主演の吉田羊はじているというより役が下りてきているかのようにさえ見えました。